第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
「また宅配するの?セバスチャンに悪いよ。今度こそ食堂に行こう」
「セバス?いいんだよ、それがヤツの仕事なんだから。それに、食堂は無理。午後、出かけるからさー」
「ねえ、午後出かけるのと、お昼に食堂行けないのって繋がりがあるの?」
「打ち合わせがてらランチして、すぐ出かけるから、食堂行ってる暇ないんだよね」
「打ち合わせって伯爵と?じゃあ、私はいない方がいいんじゃない?」
「そう冷たく言わないでよ。俺は、マインと食べたい。ね、つきあってよ」
姿勢を低くして、上目遣いに私を見すえるアーサー。
期待に満ちて輝いている、深い青い瞳がしっかりと私を捉えている。口元には、茶目っ気溢れる笑みを浮かべていて―――。
………そんなかわいく懇願されては、断れない。
「わかった」
「よかった。楽しみにしてる」
そう言われて、なんだか恥ずかしくなって目を逸らす。
この、なんともいえない甘い空間にくすぐったさを覚えて―――。
「ねー、マイン。もしかして次の時間、空きとか言う?」
「ううん。授業だよ」
「そ?あと二分で本鈴鳴るケド?」
「え!」
アーサーの指差す先、廊下の壁に掲げられた時計を見やる。
ヤバイッ!本当に遅刻する!
もう余裕も何もないっ!
「じゃあ、お昼にね」
アーサーからの念押しを背で受け止めて、振り返ることなく全速力で駆け出した。