第21章 私立リアリン学園!7時間目~カイン~
「あのさ、言いづらいかもしれないけど、正直に話してほしいな」
私、落ち着いた静かな声でそう言うと。
カインがボソッと呟いた。
「………苦手なんだよ」
「何が?論文が?よく書けてるよ?」
「………漢字が」
「は?漢字?」
私は、思わずカインをじっと見つめる。
「夏休みで国に帰ってた間中、日本語なんか使う時ねえし」
「国に帰ってたって………あれ、だって夏休み中、会ったよね?」
「あの日は空港に向かってた。それなのに、ノアの奴、突然用事できたから帰国するのやめるだと。そんでメイドカフェ巡りとか………ったく………って、そうじゃねえだろっ」
「………私こそ脱線ごめん。それで?漢字が苦手なんだね?」
「そうだ。特に、送り仮名。『てにをは』も、ややこしいし」
それを、とっても偉そうに言うカイン………。
「だから?この論文は、そんな理由なの?」
「そんな理由だよ。おい、誰にも言うなよ?」
「な~~んだ」
私は、肩の力が抜けていくのを感じる。
「何だよ、その言い方」
「や、だってさ、ジル教頭なんか、いかにも心の問題です~、みたいな捉え方だったからさ。もっとこう、深い事情があるのかなって」
「深読みし過ぎだ」
「うん、本当だよね。実は、ただのバカだったってことか」
「は?おい、バカって何だよ!!」
「だって、バカでしょ!?忘れちゃうの?ありえないでしょ」
「俺様は忙しいんだよ!」
「それ、理由にならないし」
「あー、うるせえ」
と、唐突に。
立ち上がったカインは、私の口を手の平で塞ぐ。