第5章 私立リアリン学園!序章
ブランを少し口に含む。
………甘い。
見た目からして、ワインに近いすっきりとした味わいかと思いきや。
………途端に、クラリと視界が揺らぐ。
これ、かなりアルコール度数高そう。
口いっぱいに広がる、甘さと爽やかな香り。
絶妙な味わいのカクテルに飲み込まれそうだ―――。
「ルージュも飲む?」
結衣がグラスを差し出したので、受け取ってお互いの味見をする。
「………ん、こっちもおいしい」
ドロリと濃く、生々しいほどに血液のような様相のルージュは、フルーティで清々しく、いい意味で期待を裏切られた。
こんなに美味しいカクテルは、初めてだった。
これは、ヴァンパイアでなくても、やみつきになる味―――。
でも、どうして、ヴァンパイアなんだろう………。
映画や、小説によく登場する吸血鬼。
意外と人気なんだよね。
イケメンなヴァンパイアになら血を吸われてもいいって、思う人が多いのかな。
血を吸われる、なんて………気味が悪いんだけど。
なんだか、結衣の話し声が遠く聞こえる。
頭がぼんやりとしてくる。
………酔いが、まわってるのかな。
何の気なしに、カウンターの向こうにいるレオナルドさんに視線を向ける。
すると、彼もまた、私をじっと見つめている。
―――今度は、はっきりと確信する。
彼も、私を見ている―――。
ドクン、ドクンと、全身の血液が強く脈うっている。
―――なんだろう。
ここにいては、いけない。
なぜか、そう思う。
後戻りできないような、どこかに………なにかに、引き込まれそうで―――。