第45章 メイズミー
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朝目覚めて、廊下に出ると、さきちゃんと出くわした。
『あ………』
「寧々…!」
瞬時に自分の体がこわばるのがわかって、申し訳ない気持ちになった。
「大丈夫!?昨日のニュース見たよ……!」
さきちゃんは私に駆け寄って腕を掴む。
その手は優しくて、ただ純粋に心配をしてくれているんだって伝わってきて…
『へ……?
怒って…ないの?』
「怒るって、なんで?」
『え、だって…私…隠してたんだよ?本当の個性…』
自分の声が震えてるのが分かって、下唇を噛んだ。
こんなに罪悪感があるのなら、ヒーローになればいいのに…
それでもなりたくないなんて、私はどこまでズルい人間なんだろう。
「あー…それはさ、たしかに…
言ってくれたらよかったのにって思ったけど。
恥ずかしいよね…その…キスが個性ってさ」
さきちゃんは周りに誰もいないのに、コソッと声を潜めてくれた。
その優しさが嬉しくて、心がじんわり暖かくなっていく…
「だから、気にしてないよ!
それより私、昨日は探出先輩に殴り込もうと思って2-Eの寮前で張り込んでたのに…アイツ、帰ってこなかったからね
今日こそ帰ってくるだろうから…文句言ってやる」
さきちゃんは目を据わらせて舌打ちをする。
私は苦笑いをしながら、どうにかさきちゃんをなだめたけれど、さきちゃんは納得いってなさそうだった。
きっと、ゆきの方がさきちゃんの扱いが上手だから…ゆきに頼もう。
「それよりさ、お腹空いたー。
寧々、ご飯作って!」
『うん』
さきちゃんは私の手を引いてエレベーターに乗り込むと、軽い手つきで1階のボタンを押した。