第28章 ep2 深孤の優しさ
「もうすぐ3時…」
廊下の窓を拭きながら、はふと時計を見遣った。
長針は11と12の間を差していて、温かな室内では眠気が襲ってくる時間帯だ。
(ダメダメ!またこの前みたいにユウ様に怒られる)
がティエドール邸の使用人となって、一週間が経とうとしていた。
仕事にも一通り慣れ、他の使用人達とも親しくなった頃が、1番気が緩みやすい。
特に自分は初日にあんな事態を招いてしまったのだ。
今まで以上に注意を払わねば。
(…とは思うんだけど…やっぱり眠い…)
「ちゃん…ちょっと来てほしいんだけど…」
別の部屋の清掃をしていたミランダが、廊下に顔を出した。
「何、ミランダ?」
雑巾をバケツの中に入れ、タオルで手を拭きながらは彼女に駆け寄る。