第27章 ep1 昼下がりの出会い
―――…
「ハァ…ハァ…あ~怖かったさ…」
結局、ホールまでを抱き抱えてきたラビは、を降ろすとそのまま床に倒れ込んだ。
「あんなにキレたユウ見たん、久しぶりさ~」
も変に汗をかいていて、まだ鼓動が速く打っている。
「あの、さっきの人は…」
はラビを向いてそう尋ねた。
上半身を起こしラビは口を開く。
「ユウの事さ?」
「あ、はい。執事の方ですか?」
「執事~?あんなのが執事だったらうちの御主人はノイローゼさ」
ラビはひらひらと手を振った。
「じゃあ、あの人は…」
「本名、ユウ・D・ティエドール。この屋敷の次期当主さ」
「…ええ!?」
は思わず口元を押さえた。
そんな様子の彼女を見て、知らんかったさ?と首を傾げるラビ。
は目を見開いて先程の羞恥を思い出す。
勝手に部屋に入り込み、
仮眠を邪魔したあげく、次期当主である彼を執事と間違えてしまった…
これほどない最悪の三拍子…
「ま、まずいですよね…私…」
初日から
大変な事をしてしまった。
「まあ、ユウは寝起きが最悪だからな~」
「ク、クビになったりしませんか…私…」
今にも泣きそうなを見て、ラビは笑った。
「まさか~そんな事でクビになってちゃ、俺が何人いたって無駄さ」
ラビの明るい様子に、は安堵の息をついた。
「…よかった…」
「まあ、あんな短気な奴だけど、いつ帰って来るかわからない伯爵の代わりに、一生懸命仕事してる奴だから、これからよろしくな」
「…はいっ」
悪戯な猫によって彼に出会った昼下がり…
そこから少女の運命の針は時を刻み始めた…