《おそ松さん》なごみ探偵・謎の仮面と洋館の幽霊(R18)
第27章 トド松END〜警部補とわたし〜(※)
驚いてポケットを探ると、丸められた紙のようなものに指が触れた。
悪松記者は不気味に笑う。
「殺されたブラック工場の所長、デカパンには裏の顔があった。詳しく知る必要が出てきたらここに連絡をくれればいい」
「裏の顔? あの、別に……」
「何だ? 別に知る必要はないだと? いいか、自覚がないだけでお前も充分立派なクソだ! 私情に囚われ、正義を曲げてでもやがて連絡したくなるだろう! 己のクソさにもっと自信を持て!」
「あの? 連絡って……?」
ポケットからメモを取り出し広げてみる。
携帯の電話番号が走り書きされていた。
「これは悪松さんの番号ですか? ……あれ?」
顔を上げると、もう悪松記者の姿はなかった。
日の落ちた暗い公園に生温い風が吹く。
デカパン所長の裏の顔?
私が正義を曲げてでも連絡したくなる?
どういうこと?
意味が分からない。
つまり、悪松記者は警察が知らない情報を知っているの?
でも、なぜ私にそれを?
「チョロ松警部に相談したほうがいいのかな……?」
神松記者と違って、悪松記者は本当に不可解な人だ。
「もういいや。とりあえず帰ろ……」
考えるのはやめよう。
メモをしまった瞬間、スマホの電話が鳴り響いた。
見ると、チョロ松警部の番号だ。
「はい。橋本です」
『ゆりくん、もう家か? 今から署に来れるか?』
時間外にかけてくるなんて、何かあったに違いない。
「どうしたんですか?」
緊張気味に尋ねると、警部は声を張り上げた。
『ゆりくん、大変なことになった。トド松くんが脱走したんだよ!』