第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
この手の人は
ハマると抜け出せないのは
光太郎や京治で
経験済なんだから
慌てて先生の方に視線を流す、けど
『彼氏居るんで!
見つめないですから
私は美容師の先生の話を聞きに…』
「髪の毛キレイだね
今度トリートメントしてあげるから
店に来なよ
閉店後ならユックリしてあげられるよ
マッサージも念入りにしてあげられるし」
…ぅおい!
既婚者なんじゃないのか!
なんじゃその距離は!!
「二人きりとか
緊張しちゃう~
緊張も解してくれる?」
「もちろん」
「じゃあ、いこっかなー」
女子も女子だ!
指輪が見えないのか?!
いや、指輪してるくせに
口説くなっっ
あー!駄目だ!
笑顔が作れなくなる!!
まだオーダー前だから
飲み物がなくて
余計に喉越しが悪い愚痴を
必死に抑えてると
「おーい、センセ~
奥さんにバラすよ
姫凪ちゃん引いてるじゃん
帰るって逃げたら
自慢の髪の毛燃やすよ~」
タバコの煙を
先生の髪の毛に吹き掛けると
近過ぎた距離のせいで
咽て離れる女子達