第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
『あ、マッキー
なに?ハンドクリーム?』
「俺も相当だけど
姫凪ちゃんの指先も
痛そうだからさ~」
私の割れた指先を見つめ
眉を下げるのは
宮城から上京した花巻貴大
同じ年だし彼もバレー経験者って事で
何かと話をするうちに仲良くなった
『ありがとう
ホント仕方ないとは言え
痛みは辛いよね
マッキーは今日はロット巻く練習?』
「そうしようと思ってたけど
姫凪ちゃんがハケの練習するなら
俺もそうしようかな
お互いの仕上がり見てさ
アドバスし合うとかどうよ?」
『え?私は良いけど…
こっちにあわせてくれていいの?』
「良いって!
その代わり今度一緒に
ご飯行かね?
あ!もちろんグループで!
前に髪を切りに来た俺の先輩がさ
姫凪ちゃん見て
気に入っちゃってさ
一緒に飲みたいって煩いんだよ」
まぁ、こんな会話も
別に珍しくない
大抵は社交辞令だけど
たまに本気の合コンに誘われたりもする
『気が向いたらね~
てゆっか、私彼氏居るから
そこんとこは
その先輩とやらにキッチリ話しといてよ
むしろ彼氏連れて行くかもよ』
「彼氏付き!?どんだけ!?」