第69章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋(宮侑 治)⑤
「普通に帰すと思う?」
「なに言うて…」
「アンタみたいに
細くて小っこいオンナ
連れ去るのなんか
簡単ってコト」
サクラの手を握り
歩幅を広げ
周りの同級生の視線を波を
泳ぐ様に進んで行く
お気に入りの場所に連れ込んで
「ほら、簡単だろ?
なぁ…いい加減素直になんなよ…
なんで泣かないわけ?
ワガママすら言わないでさ。
なんで我慢してまで
治なわけ?
それって…幸せ?」
サクラを抱き締める
「私の勝手やろ
離して…角名くんには
関係ない…!」
分かってるよ
アンタの勝手だ、なんて。
俺が何言っても変わらない事も
だけど
「俺にもアンタの気持ちは関係ない」
言わずに居られない
それくらい膨らんで苦しいんだ