第5章 ドS彼氏の初デート
「………………」
愁夜くんが私の視界から消えた後、私は彼が向かった方と逆の方に視界を移した。
カフェの窓ガラス越しに外の景色が見える。
小さい子供と手を繋ぎ一緒に仲良く歩く母親、
オシャレな格好をして笑いあっている中学生達…。
そんな人々の中で私の目に止まった光景。
それは、お互いの指を絡めて手を繋ぎ、楽しそうに笑って話している恋人達の姿だった。
私達も映画館に行く時やここに来るときはあのようにして手を繋いでいた。
私達もあのように見えたのだろうか。
「…………っ……」
そう考えるとなんだか、恥ずかしくなってくる。
……私は今まで恋人という存在がいなかった。
愁夜くんみたいな存在は私にとって初めてで。
戸惑うことは、凄く多い。
初めて二人きりになったとき、初めてキスしたとき……。
そして、今もそうだ。
改めて"恋人"というものを実感して恥ずかしくなった。
けど、それと同時に何故か嬉しさも感じる。
本当、恋というものはよくわからない。
…でも。
愁夜くんはどうなんだろう。
不意にそんな考えが頭に浮かんだ。
愁夜くんは、私みたいに初めてじゃないのかもしれない。
キスとか慣れてるみたいだし、もしかしたら中学生の頃彼女がいたかもしれない。
愁夜くんならかっこいいし、頭もいいし、その可能性もありえる。
「…………っ…!」
…心がズキンと痛んだ気がした。