第4章 ドS彼氏、教える
彼は、床の上で仰向けで倒れた──いや、倒された私の身体の上に馬乗りになった。
そして、言葉を続ける。
「……狼みてぇな男どもに、ぱくっと喰われちゃうぜ……?
……こうやって、な……」
愁夜くんはそれだけ言うと、私の上からどき、立ち上がった。
「……っ…………」
ヤバい。
心臓が、ばくばくいってる。
驚きとかもあるけど、やっぱり一番大きいのは……恐怖。
逃げられない体制。
今から何かをされると思ってしまう思考。
──そして、私を見る彼の表情。
優しくもなく、楽しそうでもない。
真剣で、少し冷たさも入ったその表情がとても怖くて。
でも、目をそらすことを許さない瞳が私を捕らえて。
私は何も出来ず、ただ震えていただけだった。
今回は愁夜くんだったし、未遂で終わった。
けど、もしこれが、愁夜くんじゃなく全く知らない人とか、嫌いな人とかだったら……。
それに、愁夜くんだったとしても、本当に襲われていたら……。
「…………っ」
ゾッと寒気が私を襲う。
私は身体を起こした。けど、まだ足が震えていて立ち上がることは出来なかった。