第23章 水色の思い出 (逆ハー)
「何であいつらあっち行っちゃったんだよ」
ダンテが不思議そうに尋ねる。
「わかんない…何か突然…」
「放っておけ。心配いらん」
そっけなく答えるバージル。理由を知っていそうな雰囲気だったが、聞いた所で答える気もなさそうだった。
「ん。あいつらビーチボール持ってっちまったのか」
遊ぼうにも道具が無い、とダンテが気落ちしたような声を出す。
バージルが荷物を置いてある場所に目を向けた。
「もう一つ持ってきているはずだろう」
「んじゃそれ持って来ようぜ。場所わかんねからバージル一緒に来てー」
「貴様…ビーチボールを二つ入れろ入れろと騒いだのはどこの誰だ」
「いーから!あと浮き輪も持ってこよーぜ!あとイルカちゃんも!」
ざばざばと歩き出してしまうダンテを心底呆れたように睨むと、バージルは「すぐ戻る」とに言い残して後を追って行った。
残されたは、二人のたくましい背中を眺めて一息つく。
双子だというのに並ぶと違いがはっきりわかる。それが少し微笑ましい。
ダンテは筋肉質で少し日に焼け、バージルは細く病的なまでに白かった。
逆ナンされないといいけど、と思いながら視線を外し、空を見上げる。
見上げて息をついた。真っ青だ。
他の海水客の声は楽しさに溢れていて心地良く、やっぱり来て良かったと思う。
海に入ってしまえば水着も気になる程ではないし、さざなみの音がゆるやかに聴覚を刺激する。
気持ちがいい。
たぷん、と首まで海につかってみた。水中で手の平を広げて水を感じる。
綺麗だと、純粋にそう思う。このまま海に溶けていきそうだった。