第13章 必要なものは
行ってらっしゃい、と笑顔で手を振る彼女の顔は、いつもと同じような笑みを浮かべているもののいつもより憔悴しているように見えた。
それもそうだろう。
仕事続きで、もはや家では食事と入浴と睡眠をするだけの状態。初めのうちは文句や愚痴で紛らわせていたようだが、毎度言っても迷惑になると考えたのか、最近は「疲れた」の一言すらあまり聞かなくなった。
忙しいのは良い事だが、ここまで来るとあまりを疲れさせるなと仕事先に文句を言いたくなる。
文句でも愚痴でも良い、言ってもらえれば何かが出来る。しかし言ってもらえなければ、何も出来ない。
頑張りすぎるのはの悪い癖だ。
迷惑を掛けまいとする余り、自愛が疎かになっている。自覚がない為、下手をすれば倒れてしまいかねない。
それだけは阻止しなければ。
夕飯の買い出しにスーパーへ入る。
カゴを手に取り、材料を選び抜き、なるべく新鮮なものを手にとって入れていく。
気を緩めれば今にも倒れそうな彼女に俺がしてやれる事は、食事の栄養バランスに気をつける事。安心して休める空間を作る事。
金云々には構っていられない。
なるべく食べやすいものを。栄養のあるものを。
彼女に必要なものは全て俺が揃えよう。
2007/11/10
(バージルは見えない所で尽くしてくれると思う派)