第1章 絶体絶命
突然起き上がったに男は別段驚いた風でもなく落ち着いていて。
本を読んでいた顔を上げようともせずに言った。
「大人しくしろ。本当に死にたいのか」
その物言いにはむっとしたが、それよりも頭を占めるもの。
見捨てられたとばかり思っていた男がここにいる。
という事は。
「……もしかして…助けてくれた…?」
人に無関心な目。
助けて欲しいと言っておいて勝手な考えだが、絶対助けてくれないと思っていたのに。
「……………」
男はそれには答えず、本のページを一枚めくった。
───そんなに悪い人じゃないの…かな
じっと座る男の横を見ると、食べ終わった食事の食器と水の入った桶。
あるって事は、そういう事だよね?
ずっと看病してくれて……。
嬉しくなった瞬間、くぅ…とお腹が鳴る。
は慌ててお腹を押さえた。
───は、はずかし!
男はちらりとこちらを見て息をつくと、ぱたんと本を閉じる。
「食欲があるなら、大丈夫なんだろうな」
立ち上がり、部屋のドアに向かった。
「──あ あのっ」
「…何だ」
「助けてくれてありがとう。私は。あなたは?」
「…………」
男はじっとを見つめた後、ふいっと顔を背け。
「………バージル」
言い残して、部屋を出てしまった。