第9章 留守番
───冗談じゃねえぞ
ダンテは鋭い眼光で男を睨む。
ふと現れた人影に顔を上げた男は、一瞬で瞬く間に凍りついた。
そしてダンテは、驚いて振り返ったに人目も気にせず。
「! むっ!?」
口付ける。
そして無理矢理舌を入れ、まだの口の中にある食べ物をすくうと、自分が半分食べた。
くちゃ、とわずかに咀嚼した音。
「味は悪かねえな」
ぺろりと唇をなめるダンテ。
突然の事に力が抜けてぐるぐるしているを抱きかかえると、男を睨み。
「二度と俺の女に触んな。次目の前に出てきやがったら…」
凍りついている彼の耳元にささやいてやる。
「殺すぞ」
そう言い捨て、を抱えて目もくれずその場を立ち去った。
は混乱する頭を抑え、珍しく歩調を合わせずにずかずか歩くダンテに慌てて言う。
「だっダンテ!? 何でこんなとこに…仕事は…!」
「んだよ。言っとくがもだぞ。あんな知らねぇ男から食い物もらいやがって…」
「だってあれは試食…」
「試食でもだ。は危機感がなさすぎるぜ」
───怒ってる…
は怖くなった。怒られるのは初めてだ。
見上げたダンテの顔はしかめられていて、前をじっと見て歩いている。
「……ごめんなさい…」
は謝るが、ダンテの気が収まる気配はない。
「バージルも何やってんだ。を任せたってのに…」
「バージルは悪くないの!怒らないで!」
はぱっと顔を上げた。
「私が自分勝手にあちこち動き回ったから…! だから悪いのは私なの! バージルは怒らないで!」
その必死の叫びを聞きを見ると、ダンテは少し怒りを収めた。
が泣きそうになっている。怯えているのだ。
「…買い物は昨日したじゃねえか。何買いに来たってんだよ」
少し、優しい声で尋ねる。
は言おうか迷っているようだった。
ダンテをちらりと見ては目をそらし、口ごもっていたが。
「……す…ストロベリーサンデーの材料…買いに…。ダンテ、食べたいって言ってたから作ろうと思って…ごめんなさい」
「…!」