第5章 風呂場の愛
自室で黙々と本を読んでいたバージルは、最後のページをぺらりとめくり息をついた。
本を閉じて机に置くと、水音が聞こえてくる。ダンテがまた風呂にでも入っているのだろうか。
あいつはなぜだか風呂好きのようだからな。機嫌がいいと鼻歌まで歌い出すから騒がしい事この上ない。
しかもへたくそだ。
読者に集中したせいで目の奥がずしりと重い。顔を後で洗ってこようと思ったが、そういえばが風呂を使いたいと言っていたなと思い出す。
今のうちに行こうと立ち上がると部屋を出た。
風呂場の入口はキッチン側からとリビングからの2通りがある。
バージルの部屋から近いのはキッチンで、彼は当然キッチンを通って行った。
だから気付かなかった。
ソファでダンテが寝ているのに。
ダンテがシャワーを浴びるにしては大人しい事に。
ドアの前に立つ。つい昨日風呂場を掃除したばかりだ。もう汚したりしていないだろうな。
そう思いながらもまさかが入っているとは知らず、バージルは悠々と風呂場へのドアを開けた。
は体も頭も洗い終わり、やっとすっきりした気分で用意されたバスタオルを手にとった。
身体を適当に拭いて、寒くならないよう胸からくるくる身体に巻く。
全く、今日突然来たばかりだというのに至れり尽くせりだ。
二人は気にするなと言っていたがそうもいかず、罪悪感に似た気持ちが渦巻く。
───もっとしっかりしなきゃ。
心配かけないように。この家を安心して任せられるように。
そしていつか絶対お礼をしよう。こんなに親切にしてくれた二人に、とびっきりのお礼を。
そのためにもまず、自分が今できる事をする。
は鏡に映る自分を見つめ、気合いを入れようと顔をぱんっと叩いた。
───よし。
決意に満ちた自分を確認し、着替えようと替えの服に手をのばし、バスタオルをはずしかけた…その時。
ガチャ…
───え…
突然ドアが開き、は手を止めた。
風かと思い顔を上げ閉めようとする。が。
「………!!」
そこには、バージルが。