第4章 お兄様の秘め事
と、買ってしまった。
両親に怒られるなきっと。
私はその場で悟りを開いた。が、また閉じて、その少年に振り返った
光のない瞳だ、なんて儚げなのだろう。
「貴方、行く宛はあるの?」
「あて…?」
少年は首を傾げる。
「ご両親は?」
「いません…」
ほそぼそとした声でそう言った少年は私が何を考えているのか、思惑を知ろうとするように私をみている
「名前は?」
「ありません、僕達奴隷に……名前はありません」
奴隷とは平民より下、主人の私有物のように、働かされる、自由のない人だ。
名前もつけてはもらえないのか……。
今、私はこの子の主人になった。
「行くところ、身寄り、金も名前もない、働くのは難しそうね」
私はこの子を独立させようと思ったが無理なようだ。奴隷というものを簡単に独立はさせられない。
「では、私の家で私専属の執事になって」
「しつじ……?せんぞくの?」
もう一度、聞き返すようにしている少年。その言葉を理解したのか、 目を見開いた
「僕は奴隷です。僕は貴女様の専属の執事なんて」
貴族の専属執事といえば、貴族や商人といった高貴な輩ばかりがなるのだけど
私はそんなことどうでもいい、この子を独立させてあげたい。
そうしなくてはならない気までする。だから、私にできることとすれば
「さあ、メイフィス、私、サーカスの第二部公演までに席に戻りたいの、道案内、して?」
私は優しく、できるだけ、優しい声で微笑む。
メイフィス、それは私が今、名付けた名前である。
「メイフィス………。」
自分に与えられた名前を口にした、メイフィスは呆然としていた
「もう、貴方は奴隷ではないわ、ここからは、私の専属執事。
働いて、お金を貯めて、自分のやりたいことをここで見つけなさい!
自分のやりたい、職業につけばいい。
いつでも解任してあげる。
奴隷であった貴方への命令、ちゃんと成し遂げること!」
「天使……様」
え?天使…?
メイフィスは私に儚げな笑顔を向ける。その瞳には光が宿っていた
天使って今、言わなかった?メイフィス。
あと、メイフィスってどこかで聞いたことあるし、この容姿も……ま、いっか