第20章 動く2
「三成」
「はい」
御館様が三成へと視線を投げると、三成は小さく頷き話しはじめる。
「私も顕如を誘き出す好機と考えます。ことね様のことを知れば、顕如は必ず現れるでしょう。ことね様達の居場所を掴み、顕如が動く少し前を此方が動けば良いことです」
「ならば、俺と秀吉の責任は重大だな」
「そうなりますね、光秀様」
俺と三成のやり取りに、秀吉と家康が眉間の皺を深くする。政宗の腹はすでに決まったようで、鋭い眼差しのまま静かに話を聞いていた。三成は御館様が頷くのを確かめると話を進める。
「これより城内の者に、内密にと言うことでことね様が拐かされたと報告を致します。いろは屋さんは、漏れ聞いたうわさとして拐かしの話を町に流して下さい。その方が信憑性が増すでしょう。そして目星の場所で動きがあれば、すぐにこちらへ。
ことね様達の居場所がわかるか、顕如が動き出すのが早いかの勝負となります。できるなら目星の場所をお聞きして、今後の動きを考えておきたいのですが……」
「はい、私どもの情報はすべてお話致します」
「ありがとうございます」
そう答え頭を下げる吉右衛門を見て、三成が微笑み御館様に頷いて見せる。御館様は面白そうな顔をされ、皆を見渡す。
「ならば、決まったな。三成、吉右衛門はここへ残れ。秀吉、光秀はそこの男を。政宗、家康は城内の者に伝えよ。町への細工は、一之助。一時も無駄にするな」
「「「「「御意!」」」」」
御館様の激に各々が動き出す。
男達の瞳は夕闇を照らすかがり火を映し、赤く燃えているようだった。