第13章 悪魔
「…そうか」
フッと、翔ちゃんの頬が緩む
「…いいな。」
「何が?」
「…友達。
俺にはそういう人、いないから、」
「カズくん…」
「友達だろ?」
「え…?」
「今日から」
翔ちゃんの手がカズくんの目の前に差し出されて。
「改めてよろしくな」
「…っ、櫻井くん、」
「翔」
「え…?」
「“翔”でいいよ」
「よろしく…翔くん。」
二人の手が堅く握られるのを
温かな気持ちで見つめていた
「でさぁ、コイツほんっっとバカなの!」
「ちょっと、しょーちゃん! 俺の感度下げないでくれる!?」
「ホラ、出た!
感度じゃなくて好感度な!」
「ソレ!俺が言いたかったヤツ!」
三人で共有するかの様に
俺の昔のおバカエピソードを惜しげもなく披露する翔ちゃんと
涙目で笑いを堪えながらそれを聞いてるカズくんと。
「雅紀は国語が壊滅的にダメでさぁ
“雑木林”を“ざつもくりん”って読むし、“10分半身浴”は“10分半、しんよく”って句読点の位置おかしいし。
濃厚なバニラアイス食って“過激な母ちゃんの味がする”なんて表現する奴、いる?」
「あー、もう! 恥ずかしいからやめて!」
放っておいたらまだまだ出てきそうだから
聞いちゃダメ、ってカズくんの両耳を塞いだ
「仲が良いのは結構だけどイチャつくのは俺が帰ってからにしてくれ!」
あーだこーだと言い合っていると
翔ちゃんのスマホから聞き慣れない着信音が聞こえた