第22章 Rey16
「マネージャーもだけど最近一織と2人でいなくなること多いよな」
「………」
「大和さーん」
「……」
「おっさん聞いてんのか!?」
「ミツ?なんか言ったか?」
「ダメだこれ」
◇◇◇
「スマホの件はどうでもいいですけど」
『見たの』
「はい」
見られても詳しいことが分からなければなんとでもなると思う。
けど…相手が一織だとどうだろう。
「そんな理由で仕事に支障を出さないでください」
『勘違いしてない?むしろ逆なんだけど』
「え?そんな…」
予想外だったのか、一織が一瞬狼狽えた。
こんな一織初めて見たかもしれない。
『私、ちゃんとアイドル目指す。その人は私にキッカケをくれただけ』
「八乙女楽がですか」
あれだけでどうしてわかるんだろう。
もしかしたらカマをかけてるだけかも知れない。
その手には乗らない。
『知り合いが八乙女楽のファンなだけだから』
「そういう事にしておきます。ここからが本題です」
今のが本題じゃなかったの…?
一織が険しい顔で私を見つめる。
「顔を隠さず歌うことは出来ますか」
『それは…まだ、わからない…顔を出さないアーティストだっているけど』
「アイドルにそれが通用するとでも思ってますか?」
『遅かれ早かれ顔は出さなきゃいけないのはわかってる…』
それなのに割り切れない。
学生の頃のトラウマだけではない気がする。
「引き摺るようでしたらまた強行手段に移ると思った方がいいですよ」
『強行…』
「社長はそうはしないでしょうけど、メディアに求められたらそうも行かなくなります。覚悟はしていてください。私からは以上です」
覚悟…か……。
アイドルになるって言うことはそう言うことなんだ。
嫌でもメディアに出なきゃならない時だってある。
楽が言いたかったことってこう言うことだったのかな…。
『とにかく今は練習するしかないんだけど』
万理さんに言われたことは、徐々に音域を広げる方が負担が少ない。
無理に高音を出すんじゃなくて、少しずつキーを上げると言うこと。
そんなに簡単なことじゃないことは自覚してる。
『一気にやると喉に負担がかかりすぎて命取りか…ん?』
大和さんからラビチャ…?
スマホを見ると一言だけだった。
【何かある前にお兄さんに言うこと】
『………?どう言う意味だろ』