第49章 ディメンター
「きゃあ!」
「なに?」
『クレアもミアも落ち着いて。エイミーは平気?』
叫んだクレアとミアを落ち着かせるように声をかけ、エイミーに問う。
「私は平気だよ〜」
『良かった。みんな、そこから動かないでね。動いたら混乱するわ』
クレア達からわかったと返事をもらった私は、杖を手探りする。杖を見つけた私は、呪文を唱えて光を出す。そのときだ。ドアがゆっくりと開いた。クレア達の息をのむ音を聞きながら入り口を見る。入口に立っていたのは、マントを着た天井までも届きそうなほどの黒い影だった。
顔は、すっぽりと頭巾で覆われている。そう、ディメンター(吸魂鬼)だ。ディメンターは、ガラガラと音を立てながらゆっくりと長く息を吸い込む。まるでその周囲から、空気以外の何かを吸い込もうとしているかのようだ。ぞっとするような冷気が、私達を襲う。そこでハッとした私は、杖をむけて唱えた。
『"エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)"!』
銀色のものが杖から飛び出した。すると、ディメンターは背を向けてスーッといなくなった。銀色のものは、私にすり寄ってから消える。しばらくして、ホグワーツ特急が再び動き出し、車内がまた明るくなった。
『大丈夫?』
振り向いた私は顔色の優れない3人を見て、ポケットからチョコレートを取り出す。
『これ、食べて。気分がよくなるわ』
「あれはなに〜?」
エイミーがチョコレートを食べながら問う。私も食べると、手足の先まで一気に暖かさが広がった。
「アズカバンのディメンターよ」
答えたのは、ミアだ。
「アズカバン?」
「魔法界の刑務所みたいなところよ」
今度は、クレアが答えた。
「ユウミ!」
そのクレアがぐっとこっちに迫ってきたので、驚いて少しさがる。
「今の守護霊の呪文じゃない?どうして出来るの?」
「本当ね、そうだわ!」
クレアの言葉にミアもそういえばそうねという感じでこちらを見る。
「それってすごいの〜?」
不思議そうに問いかけたのは、エイミーだ。そんなエイミーに説明しているうちに、列車が着いたため説明をしなくて済んだ私はホッと息をついた。
私がこの呪文の練習をしたのは、過去だ。トムと過ごしたあのとき、興味を持った私はトムがいないとき練習していたのだ。完成していなかったため、今出来たのには自分でも驚いた。
