第36章 距離感
「熱い……熱い、熱い……熱い!」
とにかく熱い!
熱中症か、って言いたいくらいに熱いしクラクラする。
熱中症になったことないからわからないけど。
いつもの感じとはなんだか違う気がする。
胸元を押さえながら誰にも会わないことを祈り前へと進む
足音や気配などは感じられないし、視界もぼやけてはいるが見えないほどではない。このまま、まっすぐ進んでいけば自分の部屋にへとたどり着くはずだ。
そう信じて前に進んでいたが、前の方から足音が聞こえた。
やばい……。
身を隠すために誰の部屋かもわからない部屋にへと入れば身を屈め息を潜めて立ち去るのを待つ。
確か第一部隊は……そろそろ戻ってくるはずだけど……玄関とは逆方向だし彼らだという可能性はないか。
もし誰かが重傷くらいの傷を負っていたら……私はこんなんだし手入れなんてできっこない。
……考えるのはやめよ。
本当になったらなんか怖いし。
襖のそばで誰の足音か……短刀か太刀の誰かくらいはわかるかなと耳を澄ませて聞いていてもまったくもって誰かなんてわからない。
少しずつ近づいてくる足音に心臓が高鳴る。
ときめきとは違うとはいえこの高鳴りも危ないんじゃ……いつもと違って程度は軽いみたいだけど、それでもつらいことにはかわりない。
私に気付かず早くどっか行ってよ……。
山姥切「空が青いな……」
いや、なに言ってるの!
青くないよ!
かすかに紅がかったオレンジとも青とも言えない空だよ!
って、こんなところでそんなこと呟いている場合か!てか君かよまんばちゃん!
「っ……」
やば、ヨダレ垂れそう……目の前に美味しいものを用意された獣みたいじゃないか。
目を閉じて気持ちを落ち着かせようと試みるが、政府の人が言ってた通りそう簡単にはどうにかなるものでもないようだ。
まんばちゃんもこのまま気づかず行ってくれれば私は平和的に部屋に戻れ……っ
そう考えていたが勢いよく襖が開かれた。