爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第5章 悪意 中國山地
人指し指を自分の顎に当て、困った顔をする子珍の姿が三沢には微笑ましかった。出会った時から「標準語」に洋語を加えてペラペラと話し出した顧問団の許少校やそもそも日本語を覚える気の更々ない、博忠発(Bo Zhong)海軍中校に比べたら、よっぽど。
「しかし、それでも粗方は出来ていますから」
「ほんと? やった、やった」
目まぐるしく表情の変わる子珍だが、どうやらこれが素であるようで、当初「カマトト女」と思って何時化けの皮が剥がれるかを楽しみにしていた宇喜多・三沢の主従は、頭は良いが邪気がなく、とことん万事へ正直な周に多少ペースを乱されていた。
「最初に比べたら、雲泥の差ですよ」
「ウンデイノサなんだ。ほう」
「…ことわざは、これからですね」
「ことわざだったの、ウンデイノサ?」
「ええ。『大きく差が開いている』って事です」
「差…ああ、ウンデイの『差』?」
「そうです、そうです。良く出来ました」
「よくできました!」
子珍には今度諺の辞書でもあげよう。大坂で研修を受けて以来、方広院和泉という講師の影響を強く受けていた三沢は、日本語を継承して行く事に対して強い責任感を持ち始めていた。
「ところで、上尉は行かないのですか、宴会?」
「わたし、お酒きらい」
嫌いなのは私も同じだけど、そりゃ付き合いだろう……。どうやらこの子にはそういう感覚はないようだ。
「それに、これからお仕事あるの」
「御仕事、ですか?」
「はい、大島をとりかえす準備」
「‥‥‥‥‥‥‥」
随分、さらっと言ってくれたな。
周防大島奪還作戦。これは屋代島の陥落直後から山陰陽征長軍司令部で練られて来た作戦計画であったが、大坂が当初難色を示していたために一旦暗礁に乗り上げていた。
「……大坂からの依頼?」
「? それは知らない」