第7章 彩駆。
ふと、腰を曲げるとぴとりとくっつく息子。大きくなったとはいえ、甘えん坊だ。
「まあ、どうしたんですか?劉輝」
「千代!!栗花落師ともうお勉強やなのだ!」
「なぁっ!?」
追いついた栗花落は目を丸くしていた。
よしよし、と背中を撫でるとふらりと何故か王が歩いてくるのが見えた。
栗花落姫様に彼をここから立ち去らせるようにと、少し劉輝を任せて欲しいと言えばしょんぼりしながら立ちさる。
劉輝を部屋に案内すると、涙をポロポロ落としていた。
「⋯毒もうやだ」
「毒?」
「栗花落師が⋯少しだけ、身体に抵抗を作るとかなんとか⋯ううっ」
千代は驚き考え込む。少しして納得する。
「なら、千代めも御一緒致します。」
「ほん、とう?」
「嘘をついたことはありませんよ」
劉輝はぱあっと顔が明るくなり涙を拭っていた。
そろりと、劉輝を抱きしめて微笑む。
暖かい温もり。
幼い香り。
「劉輝、知らないことは怖いことだけれど、知らないと失う事もあるのよ」
「っ⋯やだ⋯」
駄々っ子の様で、眉を下げて笑ってしまう。ああ、この子がこの小さい背中が民を背負い愛を約束するのだと。
そんなことを思うだけで何処までもこの子の味方でいられる。
「今晩から、行きますね。ですから、栗花落姫様を嫌いとか怖いとか勉強嫌だ等言って困らせてはなりませんよ」
「うぅ⋯千代が言うなら⋯」
「はい、お約束の指切り」
劉輝は嬉しそうに小指を絡ませる。
それを見て目を閉じる。ぴとりと、やけどの頬に触る劉輝。じいっと見つめる。
「どうかしましたか?怖いでしょう」
「前に兄上から聞いた⋯⋯悪かった⋯千代⋯」
「何故謝るのです?母親が子供を守って当然です。私の教育は正しいと評判はいいんですから、劉輝が胸を痛める必要はないわ、もし、悲しいのなら、沢山お勉強するのよ、そうしたら、きっと⋯欲しいものの探し方が分かるようになるから」
優しく照れた様に微笑む千代の頬にキスをする。痛々しくザラりとする頬。
「もう、可愛い子ね、ほら、私にもさせてちょうだい」
頬に口付け。
ぎゅっと抱きしめられるだけて強くなれる気がした。振り返れば優しく微笑む母。
誇らしくて、少し照れくさくて。
嬉しくて。
容姿が変わった母親を親愛していた。