第6章 番外編
「ん⋯⋯⋯」
目が覚めて、当たりを見渡す。
あぁ、夢かと思うまで少し時間がかかった。
優しい香りにふと、肩にかかっていた着物を見て驚く。あぁ、きっと待たせてしまっていたのだろう。
「旺季様⋯⋯」
貴方はどの世界でもちゃんと、私を見ていて。
私の代わりに王を嫌ってくれていた。
ぎゅっと、着物を抱きしめる。
私を馬鹿だと貴方は言ってくれた。
本当は愛してほしい癖にと、愛して欲しくてたまらない癖にと。
家族愛では物足りない癖に誤魔化してばかりだと。
きっとそう。
そうだった。
今もまだそれを認められない。
「旺季様、どうしたら愛されたいと言えるのですか?」
きっとあなたはそんな質問をしたら悲しげに眉を下げ、静かに目を閉じて怒りを温めるのでしょう。
誰より優しい人だから。
あの人以上、ただ、馬鹿みたいに優しい人を私はまだ知らない。
だから、変えられない。
あの人を死なすことを。
でもね、旺季様。
今回で私は最後にしようと決めてるの。
だから誰にも頼らないわ、貴方にも、優しさを求めない。
独りで始めたこと。
最後もきっと、独りぼっちだから。
「お后様、王様が参りました」
「⋯この上着、隠しておいてくれますか⋯きっとまた取りに来るわ、その日まで大切に保管しておいて下さい」
「はい、かしこまりました。」
いつか、貴方に愛されてみたいと思っていた。
けれど、家族愛以上を望んではただただ崩壊するだけ。
今はそれを理解しているから。