第5章 彩家。
千代は不器用な楽に耳を傾けて窓を開けぼんやりとしていた。
体調が優れない日々が続き、王との夜伽も増えた。外朝は息が詰まるのだろう。と、刺繍をしながら腑抜けのように窓の外を眺めていた。
ガヤガヤと騒がしい雰囲気が近づき、ふと顔を向ける。
珠翠が驚き頭を下げて下がっていくのが見えた。
あぁ、今日は公休日だったか。
なんて思い出したのは彼の顔を見て。
「王様⋯あぁ、今火を入れますね」
いいから座れと言われ珠翠を呼ぶと窓を閉めて火をいれていた。
「何でしょうか」
お茶をお持ちしました。と言う声に千代はため息を吐きながらありがとうと言う。女官が下がるのを見て、珠翠にお茶をと言いつける。
「用心には越した事はないですからね」
貴方は王様でございますから、と微笑む。
彼の手のひらの上は自由で楽で美しい幸せがあった。
けれど⋯
そろりと、手を握る。
「時期王は、劉輝とする。それを公布させる」
「まぁ!喜ばしい事ですね!」
にこりと微笑む。
「だから、俺の子供を安心して産め」
千代と珠翠は固まる。
「は、はい?言っている意味が解りません、王様、私は子供を産むつもりは毛頭ないと仰ったはずですが⋯?」
「次の王は今の王の俺が決めた、それは絶対だ。だから、お前が子を産んで争いになることはないだろう」
「なぜ断言出来るのですか!!」
「劉輝と、もう一人、お前をまっすぐ愛し正しい目をして優しい心を持っているからだろう。潔癖なまでの兄だった、あれは、劉輝は優しく今の幸せしか知らず探せないでいた、そんなアイツをお前は褒めた讃えた。兄思いのいい子だと。」
「それが⋯なんの関係があるのですか?」
「国政、世継ぎ争いに民と政治を巻き込まぬ為に二人を千切り、それでも愛するように強い優しさと絆を教えた。知っているあの餓鬼共もお前と同じ考えだろう。だから、言っている。世継ぎ争い等起きない。俺がいきてる間は絶対に起こさない」
「は、はぁ」
「だから、公布する。民と官吏共に俺の意思を」
「⋯⋯劉輝はまだ、幼いのですよ」
「公子に産まれた運命だ」
千代は眉を下げていた。
「王様が望むのであれば。御随意に」
もし水浴びを繰り返すのであれば、それこそ付け入る所だ。
夫婦の子作りへの戦が開幕した。