第4章 彩花。
ふわりと、目が覚めた。
最後に見たのは雪山だったはず。
千代は伸びをして、辺りを見渡す。
どうやら山小屋なのは確かだが、雪と白黒の生き物に囲まれ眠っていた気がする。
ガチャりと入ってきた人物に首を傾げる。
「どなた、でしょうか?」
「こっちが聞きたいね」
「私は⋯⋯名は⋯⋯⋯名前は⋯」
もどかしげに顔を歪める。
その様子をみて男は目を丸くする。
「なら、雪に埋もれて死んでそうだったから八千代だね」
「まぁ!埋もれていたのですか」
「死んでないのが不思議だけどね」
「私は仙人なのですよ、よく思い出せないのですが」
男はまじまじと、千代を見て少し考えていた。なら、と言って小屋を出て行くとすぐに戻ってくる。
何故か、その男は二人の男を連れていた。
しかも超絶そっくりな。
「まぁ!」
「⋯この方はお⋯「そうだ!さっき拾ったんだ!八千代と言う、記憶があまり無いらしい、どうだい?我が家で匿うというのは」
「それはちょっと不味くないかな?」
「何が不味いんだい、親切さ、丁度遊び相手も減って暇を持て余していたんだ良いだろう?」
ウィンクされてもきょとんとするばかりの千代を見て男は彼女を抱き上げた。
邵可が敬愛する姉上。
しかも都合がいいことに記憶がない。
これ程までの幸運はそうないだろう。
二人もその考えに至ると同じく悪巧みをするような表情をする。
千代はビクリとしながらも月に手を伸ばす。助けてと言わんばかりに涙を溜め込み。その愛くるしさに雪からもぎ取りよしよしと抱きしめる。
「八千代、みんなで暖かいご飯を食べよう、そしたらちゃんとお布団で寝るんだ、元気になったら散歩に行こう、僕等は君と沢山の予定を作っておくからゆっくり休むんだよ」
「はい⋯」
人の温もりに当てられ、すやりと眠りにつく彼女に三人は驚く。
行方不明の王の寵愛を受ける魔女。
なんとも、無垢で、なんとも美しい。
短い髪の毛は白く染まり、瞳は紅く燃えるようだった。
絵姿と全く違うがすぐに分かる。
彼女は人とは違うから。