第2章 彩香。
「あの、あにうえは⋯千代が、嫌い、なの、ですか?」
「⋯劉輝、お前はどう思う?」
「千代はきっと、えーっと、こどく、なんだとおもいます」
「ほう、なぜそう考えた?」
劉輝を抱き抱え湯浴みにと歩みを進める。
「あにうえ、千代は、えっと⋯えっと⋯ずっと、笑わないのです」
ぴたりと足を止める。
いや、彼女は劉輝や自分の前ではにこにこしてる。常に。劉輝を見ると不安気に見つめていた。
「笑わない?」
「はい、千代は⋯⋯わらってくれないのです」
寂しげに微笑む弟。
この子は誰より人を見る目がある。良く見ている。
だから、驚いた。あれほど甲斐甲斐しくそれを嫌とも仕事だからという態度も見せず世話を焼く彼女が笑わないと表現した劉輝に。
とんとんと背中を叩きそうか、と思いふける。
「あにうえ、父上は孤独なのですか?」
「⋯私にはそれは分からぬ、王は王になって見なければ理解出来ぬ、千代が孤独と称した意味も私はまだ理解出来ぬよ」
「⋯兄上、ずっとずっと大好きです!」
「なんだ、急に」
「あにうえは、すきではないですか?」
「大好きだよ、劉輝。」
擽ったい微笑みに暖かい温もり。
ふと、視線を感じ振り返るが誰も居なかった。
縹千代。
彼女は確かに女性であり、御史台の官吏である。父上もそれを知っていて黙っている。
縹家の文官。
しかも、縹家の直系としての扱いと同等の後継人達。彼女が何故官吏何かをしているのか。
「兄上明日はべんきょうかいですね!明日は一緒にべんきょうかいしますか?」
「あぁ、そうだな」
そうしようかと言えば喜ぶ弟に心が落ち着く。
「随分と清苑に嫌われたもんだな」