第1章 彩華。
「縹家と言えば秀才が多い、勉学と共に護衛を任せる。異議は認めぬ」
ピンときたのは千代だった、成程、最近の縹家本家の評判かと。
瑠花様が飛燕姫に全面的に一任した今、縹家の評判はそうなっているのかと。
瑠花様が望んだ、弱者救済。
千代は目を閉じ微笑む。ぎゅっと旺季の手を握る。
「かしこまりましたが、後宮は全焼と申しましたね、何処でお守りするのでしょうか」
「それなら、俺の寝床を一つ使えばいい」
「⋯⋯は?」
「貴様もそこに寝泊まりしたらいい、そうだろう?」
反抗しそうな顔をした千代の頭を抑え返事をするように促す旺季。
が、横目で見た千代は酷く悲しげだった。
「分かりました⋯貴方に従います」
頭を下げながら睨み見つめる。
戩華は至極楽しげにしていた。
ぎゅっと手を握る。
小さな千代の手は冷えて震えていたから。
「主上、無骨な男手ですが貴方様のお役に立てるのでしたら」
その言葉に嘘は感じなかった、ただ、何処か虚しさが含まれている気がした。
劉輝はじいっと見つめる。
憂いを含んだ瞳をただ、ただ、不思議そうに見つめていた。