第11章 才華。
人さらいよろしくで駆け抜ける街中。
ふと、立ち止まると下ろされる。
何処に着いたんだろうと服を直しながらあたりを見渡す。
「甘味屋?」
「少し時間がかかるからな」
「?」
二人で甘味屋なんて来たこともないし、この人自体こんな店に来たことがあるのだろうか?少なくとも私の記憶ではない。
「私は帰りますよ…姫様が心配です」
「あんなもん、羽羽に押し付けとけ」
「羽羽様では足らなかったから、私がこんなことになったのでしょう」
ため息をつくと、お冷を渡されお礼を口にする。
こくこくと、飲むがうーんぬるいなと思いながらメニューを眺める。この人お金もってるのだろうか?
「ねぇ、お金持ってきてるの?」
「持ってないで店に入ると思ったのか」
「まぁ、劉輝の父親ですからね」
「⋯⋯」
不服そうにしているのを横目に、メニューを選び、店員さんに注文する。
「貴方?何をお食べに?」
「お汁粉」
「だそうです」
お願いしますねと言うとじっとこちらを見られていた。
なんですか?と言えば、眉間を寄せ吐き捨てる。
「逃げ出さないんだな」
「あなたの近くに私の居場所がないのは明白です、焦る必要がどこにあるのですか?付き合いますよ、貴方が諦めるまで」
「そうか、その選択が後悔をしなきゃいいけどな」
妙に自信たっぷりでにやにやする戩華の眉間を押して苦笑いをした。
「少しはこのお婆ちゃんを労わってくれませんかね」