第10章 彩稼。
「千代にだって、父上に会いたくて会いたくて仕事も手につかない事があったろうに」
「⋯⋯⋯ありません。」
栗花落は思わず口元を抑えた。
「⋯⋯劉輝。私が選んだ愛情は愛することだけなのですよ。だから、貴方が思う愛されたいと言う気持ちは頭では理解は出来ても感情ではわからないのです。愛していますよ、戩華を。けれど、溺れてしまうだけならそれは許されないものです。」
「⋯何故なのだ」
「まぁ、意地悪な可愛い子。わかっているでしょう?良いですよ、悪役は母が務めましょう⋯⋯⋯貴方がこの国の王だからですよ。劉輝陛下」
劉輝がむくりと立ち上がるのを見て、千代は黙って見上げる。
「千代、余は少し、解った気がするのだ」
その表情を見て胸が痛む。
痛くて苦しくて。
心の中で謝る。何度も何度も。
その場所はそういう場所。
解っていた。
それなのに私は貴方をと勧め続けてきた。
「だから、余は秀麗と一緒に居たい⋯」
泣きそうな顔をしながら言うから。
「⋯えぇ、叶うと良いですね」
いつか、その辛さが当たり前になり、悲しめなくなるぐらいなら、母はどんな悪役にでもなりましょう。