第7章 彩駆。
「それで、千代。戻るのか?」
遠くを見つめ、涙を流す。
「王の決断には抗うつもりはございません」
千代を母のように慕う晏樹。
晏樹が顔に薬を塗る時だけ彼女は黙っていた。優しく塗り込む姿。話し声。確かに彼女の癒しだったのだろう。
そのおかげか、少し薄くなっていた。
「千代、王は嫌いか」
「⋯王を私は愛しています」
晏樹は「当たり前なことですよ」と笑っていた。何かを知っているように。
千代は何も映してはいなかった。
ただ、シナリオ通りに呟くよう。
胸の奥の悲しみを堪え、家を出る。
王に話を聞こうと。
その日王は朝議には出てこなかった。