第7章 彩駆。
千代は真っ青な顔で、栗花落と何やら揉めていた。自分と以外、口論さえ珍しいのだが、何処か余裕なさそうにする栗花落。
千代はふらりとすると支えようとした栗花落を突き放し転ぶ。すると、真っ青な顔をしたのは栗花落で酷く怒鳴り込んでいた。
眉間を寄せて近づくと、気づいた2人。
慌てたのは千代だった。
しがみつき、首を何度も振っていた、懇願する様に。
栗花落は千代を抱き上げボソリと囁くのが見えた。涙を浮かべ、痛むように静かに泣いていた。
「どうした」
「何でもないよ、千代は暫く私の部屋で休ませるよ。文句は聞かない」
「暫く?そいつは⋯」
「聞かないって言ったでしょ訳も聞かないで。数日だ」
千代は顔を隠すように栗花落にしがみついていた。その表情は絶望の色を滲ませていた。
千代は一言も発することはなかった。
それから暫く何故か劉輝の勉強は珠翠が見ていた。
栗花落は姿を現すことは無く。
数日と言ってから二週間が過ぎた。
夜になり千代を返せと言いに行こうとすると、酷い鳴き声と栗花落の宥める声。
そろりと、部屋を覗く。
「栗花落様お願い、私を返して、ねぇお願い、私を⋯私を⋯あの人の元に返して⋯後はあなただけなの、ねぇお願い⋯お願いです⋯⋯私も、戩華の側にいたいのです⋯あの人に褒められたいのです⋯返していや嫌なの!」
「だめだよ、ねぇ千代。私をあまり絶望させないで、君は妃として民にも臣下にも慕われ王の寵愛と呼ばれても奢らず美しい立派な妃だ」
「違うの違うわ!私は⋯彼の⋯彼の官吏になりたかったの⋯⋯孤独な王を貴方が優しく支え、私は⋯そういう世界を見たかったの⋯っ違うこれは、ただの悪夢です!!!」
酷く荒れていたのは見てわかった。
いつもは誰にでもヘラヘラしていて、ましてや栗花落に怒鳴る姿など初めて見る。
彼女を睨みつけ、眉間を寄せ髪を乱す。