第1章 彩華。
「のう、千代。お前が使える王が来て居るぞ」
千代は目を擦りながら起き上がる。
ふと、床に腰掛ける人に千代は真っ青な顔をする。
「ななななななななな!?こここここここここここは!?」
「落ち着け、貴陽について、羽羽の屋敷じゃ」
「そ、そうでしたか⋯?⋯??」
違和感だった。
千代は珍しく困惑した様な顔をしていた。
「あの⋯瑠花様⋯誰か他にいらっしゃいます、よ、ね?」
理解が遅れていた。
あぁ、そうだ。
そうだった。
彼女は、本当に捨てるのだと、一つ二つ忘れ、捨てる。
最後まで捨てられなかったのが、このバカ王。それを最期に捨てた千代。
悔しくて、悔しくて涙が流れた。
「る、瑠花様?」
「ほんに⋯お主はどうしようもない。大馬鹿者め」
「え?ど、どうかしたのですか?あぁ、いま羽羽殿にお茶でも」
唐変木!と怒鳴られ千代は入口で肩を竦めていた。
「瑠花どう言うカラクリだ」
「!?だれ、か、いるの、ですね!」
「あぁ、ややこしい。千代、主上がいる」
その言葉に目を見開き当たりを見渡し納得する。もう、自分の目には映らないのだと。
気配で居場所はわかる。
瑠花様のお隣に居るのだろう。
「も、申し訳ございません⋯すみません」
戩華の前に膝をつく。
瑠花は額を抑えていた。
彼女がどれ程起用で不器用かなど、わかっていた。
そろりと、戩華は千代に手を伸ばすが、透ける彼女⋯触ることなどなかった。
「千代、とにかくお主は疲れが溜まりまくっておる、ほら、休むのじゃ」
顔を上げた千代はなんとも情けない顔をしていた。
クスッと笑いながら大丈夫じゃと呟けばふらりふらりと床に入る。
何年も前からその身体は疲れ過ぎている。
王は何を思ったのかフンとつまらなさげに部屋を出て行ったか何を考えていたのか等さっぱりだった。
四日間千代は寝ていた。
その間に色々な手筈が終わり、瑠花と羽羽はひと息ついていた。
バタバタと慌しいのは年末だけで良いと言うのに⋯
寝顔はいつにもまして窶れていた。
夢でも働いてるのかこやつはと思い優しく撫でる。
いいタイミングだった。
全てが上手くいっている。
後は千代が目覚めるだけ。