第8章 裁判
「貴様は一体、何者だ? それらしく取り繕ってはいるようだが、正規のサーヴァントではないな?」
攻め手は決して緩めることなく、アヴェンジャーは敵へと問いかける。
「ぐ……ッ! この……ッ!!」
敵は、旗を大きく一振りし、やっとのことでアヴェンジャーと距離を取った。
「はぁ……、はぁ……!」
敵は肩で息をしている。どう見ても、辛そうだ。
「まぁ、貴様が何者であったとしても、関係のない話だ。貴様を倒しさえすれば、この異常は消え去るのだろう?」
「ぐ……! かは……ッ!」
敵は、いよいよ吐血までし始めた。見た目にはそれほどのダメージが無いように見えるが、アヴェンジャーの攻撃にさらされ続けて、内部的には相当ダメージを喰らっているのだろう。それでも、敵は地面に膝をつけることなく、旗を支えにしながらも立ち続けている。
「五月蝿い、五月蝿い、ウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイ!!!!!!」
「『調停者(ルーラー)』の名の下に命ずる! サーヴァントよ、此処より出ていけ……!」
ジャンヌ・ダルク・オルタが、旗を地面に突き立てながら、叫ぶ。それと同時に、敵を中心として、闇色の光を放つ魔法陣が展開された。
「させるか……ッ!!」
アヴェンジャーは、鉤爪を前へ突き出しながら、敵へと襲い掛かったが、その姿は敵に触れる前に、跡形もなく消えてしまった。
「……、う……、うそ……。アヴェン、ジャー……!?」
アヴェンジャーが、消えた……? 一体どこへ……?
「ハハハ……。少々手間取ったが、所詮はサーヴァント。『調停者(ルーラー)』の前には、無力ということだな。」
今のは、敵の隠された能力なのだろうか。でも、アヴェンジャーの霊基が消滅した痕跡は無い。というか、アヴェンジャーが消滅した時点で、私の令呪は、すぐさま消滅するはずだ。しかし、私の右手に宿る令呪に、何の変化も無い。ということは、どこか別の場所へ強制転移させられるなどで、隔離されてしまった可能性が高い。