第30章 年下のオトコノコ♪
仕事が終わり7時近くに地元の駅に着いた。
あ~今朝ここで智くんと別れたんだよなぁ、なんて最後にふたりで立った場所に立ち止まり連絡先を交換しなかったことをまた後悔した。
トボトボと俯き加減で歩いていると改札口を出たところで呼び止められた。
「櫻井さんっ」
声がする方を振り向くと前方の柱の所に私服姿の智くんが立っていた。
「え?智くん?どうしたの?」
ふにゃっと笑った智くんが立ち止まる俺の前に駆け寄ってきた。
「お金返そうと思って待ってました」
「わざわざ?」
はにかみながらコクンと頷く智くん。
うわっ、ヤバい抱きしめたくなるくらい可愛いんですけど…
「名前だけ聞いて連絡先聞くの忘れちゃったから、ここで待ってれば会えるかな、って…」
「ずっと待ってたの?」
「いいえ、部活もあったしお金も取りに帰ったから30分くらいかな…でもよかった、会えて…もしかしてもう帰っちゃったかなとも思ったんで」
「ごめんな、待たせて…」
「やだな、謝らないでください。俺が勝手に待っていたかっただけなんで」
「待っていたかった?」
はっ、と顔をあげ頬を赤らめる智くん。
「えっ⁉あ、いやっ、変な意味じゃなくて!」
慌てる智くん、もしかしてこれって可能性アリ?
「待たせちゃったお詫びにそこのコーヒーショップでお茶しない?奢るよ」
「え、でも、ほんとに俺が勝手に…」
「こんなおじさん相手じゃ迷惑かな?」
「いいえ!そんなこと!」
「じゃあ、決まり。行こ?」
智くんの手を取り歩き出した。
「あ、あの…櫻井さん…」
「ん、なに?」
智くんの方を見ると真っ赤に染まった顔で繋がれた手を見ていた。
「手…」
「あぁ、ごめん、つい…」
「いえ、大丈夫です」
智くんの手を解放してあげると智くんは微笑みながら繋いでいた手をもう片方の手で包み込んだ。