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【イケメン戦国】恋花謳〜コイハナウタ〜

第5章 囚われの謌【光秀】共通ルート


「ありがとうございます。もう1つ分のお金、御給金が入ったら返しますね。売り切れるのも心配だったから、嬉しいです。」

主人から受け取った金平糖が2つ入った袋を美蘭に手渡したら、そう言って顔を綻ばせた美蘭。


その可愛いらしい笑顔を見て、光秀は内心舌打ちした。

意地悪をしたつもりが、手助けになってしまっていたのだ。

くだらないことにムキになった自分にも呆れた。



「代金など、いらん。」

複雑な気持ちが光秀をぶっきらぼうにさせたが

「そうはいきません!」

光秀の機嫌などお構いなしに、

美蘭はキラキラした目で食いさがってくる。



その熱心さも信長への愛情故なのだと思うと、

光秀の胸は、また、ギュッと締め付けられた。



「ならば金は支払わなくていいから、俺の役に立て。」

熱心さに負けた光秀は、ため息をつきながら言った。

「バイトですね!」

「…ばいと?」

「あ…えっと…お仕事って意味です!」

「そうだ。金平糖の瓶1つ分、お前の時間を拘束してやる。」

「…はい!よろしくお願いします!」

「……。」


拘束してやるなどと物騒なことを言われているのに、お願いします…などと、なんという平和呆け。

盛大に呆れつつも

光秀は、

自分を信頼してついてくる美蘭が可愛いくて

愛しくて

仕方がなかった。





「…ここは…?」

街中の喧騒を離れ、安土城とは全く逆に歩き始めた光秀の後を追ってきた美蘭の目の前に現れた立派な屋敷。



「俺が贔屓にしている料亭だ。」

「料亭…ですか。」

どうりで立派な佇まいな訳だと、美蘭は思った。



「夕餉をとって帰る。付き合え。」

そう言って門をくぐろうとする光秀。

「…え?!わたし信長様にも秀吉さんにも、すぐ帰るってしか言って来てないんです。皆さんにご心配を…」

光秀の予想通り、美蘭は慌てだした。



だが

「安心しろ。城へは使いの者に伝達に行かせる。久々の安土でここの猪鍋がどうしても食べたいのだが…1人で食べる料理ではない。付き合え。」

そう淡々と言い捨てると、

光秀は、美蘭の返事も聞かず、料亭に入って行った。



「あ!…光秀さん…っ!」

美蘭は、慌ててその背中を追った。





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