第77章 約束の地へ〜おまけエピローグ2〜
健康だけが唯一取り柄の私。
思ったより産後の肥立ちが良く、女中さんや侍女の皆んなが驚くぐらい身体もみるみる回復して、予定より早く部屋から出れることになった。
出産後は意識も殆ど無くて、あまり覚えてはいないけど……皆んなが祝福してくれた事。
赤ちゃんを胸に抱いた幸せな気持ち。
赤ちゃんからほんの少し家康の面影を感じたこと。
そして
赤ちゃんを抱きながら家康が……。
ーーありがとう、ひまり。
優しい声でそう言ってくれたのを、はっきりと覚えてる。
この時代は色々しきたりがあって、それから一度も家康には会って居ない。でも家康は毎日、文を襖越しに届けてくれて私の身体をいつも気にかけてくれた。
赤ちゃんに会えるのも母乳をあげる僅かな時間だけだったけど、本来はこの時代ではそれだけでも特別なことだと、後から教えて貰った。
きっと佐助君から話を聞いて、少しでも私が過ごした世界と同じように子育てが出来るように……。
(早く、家康に会いたい)
私は二人の大切な赤ちゃんを胸に抱き、家康の姿を探す。