第2章 何事もタイミングが肝心
時は…攘夷戦争の真っ只中。
天人から国を護らんと剣をとる侍たちが集う。
その中で、命を落とす者も数知れない…
そんな中、拠点にて……
「急いで!!重傷患者は優先的に私の所へッ!」
大勢の負傷者の中、動ける者たちに的確に指示を出す女がいた。
青い陣羽織を着て、少し黒がかった青髪をした少女。
軍の基地である寺には、数え切れないほどの負傷者や死にかけの人たちが苦しむ。
そんな中で彼女は、普通の攘夷志士とは明らかに違う速さで適切な手当てを施した。
「助けてください!コイツ出血が…!」
1人の志士が肩に瀕死の重傷を負った男を連れてきた。
女はその負傷者を静かに床に寝かせ、容態を確認した。
片腕が肘ごと切られている。
女はその志士の残った腕の方の手を自分の手に掴ませた。
「私の声が聞こえるなら手を握りしめて」
こうして声をかけることで、患者の容態を確認するのだ。
グッ
志士は女の手を握り、さらに口をパクパクさせていた。
女は耳を近付けて聞き取った。
「いっ…てェ…痛ェよ…」
意識も朦朧としてる中、志士はそれだけをか細い声で訴えた。
「痛いのは生きている証拠だ。気をしっかり持つんだ」
痛覚に支配され、とても苦しんでいるが、声を出せる程度の意識はまだある。
近くにいる別の志士を呼んだ。
「至急傷口縫うから、包帯とB型の輸血パック取ってきて」
「はい」
女は、刀で斬られた腕の無残な傷口や溢れ出る大量の血を目にしたにも関わらず、全く動じず手の空いてる志士に冷静に指示を出す。
迅速に医療器具を準備し、患部から出る血を拭き取る。
一分一秒無駄に出来ない。ただ今回の負傷者がやけに多い…
銀は無事か?ヅラも辰馬も晋助も…
(いや、心配には及ばない…)
アイツらの強さやしぶとさを1番知ってることだけには自信があるつもりだ。
特にヅラや銀と晋助。同じ塾を共にした腐れ縁だからな。
今は、自分のことに集中しろ。
女は手術用器具を手に持ち、傷口の縫合を始めた。
彼女の名は雅。
“軍医”でもあり、銀時たちと同様
この戦争で戦い続ける1人の“侍”
この物語は、
攘夷戦争で天人と幕府軍に立ち向かった
侍たちの中にいた女の話