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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第12章 二人の宝物 三章


「わあ!すごい!」

徳姫の目の前には一面の花畑が
風に揺れ、輝いていた。

蓮華草に春紫苑、立葵に庭石菖。
少し遠くには白丁花や皐月が
色とりどりに咲き誇っている。

「好きなだけ選ぶと良い。」

「はいっ」

目をキラキラさせて、花を見つめる徳姫を
謙信は目を細めて見つめていた。


(信長の娘というのは気に食わんが‥)

「‥よく似ているな。」

「え?」

しゃがみこんで花を見ていた徳姫は
ふと謙信を振り返る。

「‥こちらの話だ。」

ふっと微笑んだ謙信の顔は
どこか哀しげで美しかった。

「‥母上を知っているのですか?」

「‥ああ。よく知っている。」

この乱世に相応しく無い女。
戦が嫌いで、考えも甘い。

それでいて、芯が強く
あどけない表情をしたと思えば
艷のある女の顔をする。

「‥狂おしい程に。」

「‥。」

美しい二色の瞳に影が落ち、
それがどんな感情なのかを
徳姫はまだ理解出来ないでいた。

「あの‥謙信さま、」



徳姫が言葉を続けようとした瞬間、
謙信の背後に人影が写り混んだ。

「‥家康!」

徳姫の声で振り返った謙信が
音も無く抜刀する。

―――ギィン!


「織田家の姫を攫うなんていい度胸だね。」

「徳川家康か‥。」

家康の刀を薙ぎ払い、
徳姫を背後に隠す様に距離を取る。


「まって家康!ちがうよ!」
慌てて二人間に割って入ろうとする徳姫。

「危ないから下がってて。」
あんたもあんただ、なんで上杉なんかと‥
と、ぼやく家康は額に汗をかき
酷く心配をしてくれたのだと、
徳姫にも理解出来た。


「‥いや!さがらない!」

キッと家康を見据えて
徳姫は二人の間に立ちはだかる。

「心配かけてごめんなさい。」

小さな身体で目一杯両手を広げる。

「謙信さまは私を助けてくれたの。
ここにもつれてきてくれたの。」

家康は手に持つ刀に力を込める。



「だから、けんかしないで!」

「‥徳姫。」

暫くの静寂が流れ、間をおいて
家康が刀を鞘に収めた。

「‥わかった。今回だけ見逃す。」
戦場で会ったら容赦しないから、と
大きくため息を吐く。

「‥徳姫に感謝するんだな。」
と、謙信も優雅に刀を収めた。




ピンと張っていた空気が和らぎ、
徳姫はホッと胸を撫で下ろした。

「じゃあ、みんなでお花えらぼう?」

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