第2章 Linaria~幻想~
【Linaria…11】
「なぁ、新しく入ったコ、マジで可愛くねぇ?」
「あぁ、ちゃんだろ?アレだな、マシュマロみたいな、わたあめみたいな…」
フワフワだよな。
今日は珍しく屯所の食堂で土方スペシャルをかっ込んでいると俺の耳に入って来るのは専らの名前だった。
「今日から女中としてお世話になりますです!よろしくお願いします!」
が皆の前で自己紹介をすると辺りがどよめく。
可愛い、幼女、フワフワ、彼氏いるのか、等。
勿論良い意味での方が大半を占める。
に皆釘付けになり、誰一人動こうとしない連中にさっさと仕事に戻れと渇を入れるとさっとGの様に散って行った。
溜息混じりにその様子を見届けると俺はに向き直り、もう一日くらいゆっくりしていれば良いのにと言ったのだが、は「働かざるもの、食うべからずですよ!」と言い、張り切っていた。
あぁ、この言葉をどっかの誰かに聞かせてやりてぇよ。
「なぁ、総悟」
俺は視線をから離すと目の前に平然と座った総悟を睨み付ける。
「…土方さん、俺の目の前で犬の餌食うの止めてくだせぇ。俺の爽やかな朝が台無しなんでィ」
そう言った総悟はデカい欠伸をしながら何時もの趣味の悪いアイマスクをかけ直した。
「犬の餌じゃねぇし!てか、今何時だと思ってやがる!」
昼に起き出し余裕カマして俺の目の前に出れるのはコイツしかいねぇ。
「ったく、少しはを見習えよ…」
そう言うと総悟はアイマスクを少しずらし、片目で#苗字#の姿を追う。
「そう言や、昨日からなんですねィ。、さん…」
の姿を確認すると、再びアイマスクをさげた。
どうやらがした事は決して無駄な事では無かったみてえだな。
総悟があれ程の事をビッチと呼んでいたのに、急に""と呼ぶようになったのは理由があった。
それはが退院したあの日の出来事だった。