第1章 Linaria~この恋に、気づいて~
「…え?呼んだ?」
今日は休日で友人の知世と仲良くショッピング。
欲しい物が沢山で、知世と私の両手には花ならぬショップバッグが三つ、四つと忙しい。
勿論休日と言う事もあり、モール内も家族連れや友達、恋人同士等で賑わっていた。
そんな忙しない街並みの中、やけにはっきりと私を呼ぶ声がしたんだ。
私はてっきり知世だと思って返事をしたけど...。
「え?呼んでないよ?」
そう、だよね...。
確かに聞こえたのは私を呼ぶ声。
だけど、知世の声はこんなに低い訳が無い。
私は辺りを見渡し、知り合いでも居るのかと確認するも、そう言う訳でも無さそうだった。
「空耳よね、きっと」
だけど‥‥気になる。
私を呼んだその声が...
とても、とても、切なそうに呼ぶから...。
「っ!!」
だから気付かなかった。
知世の声。
人々の声が。
鈍い音と共に悲鳴となって上がる。
気付いた時には私は空へと舞っていた。
あ…もしかして、私轢かれた…的な?
なんて呑気な事を思っている場合では無いのだけれど、アスファルトに叩き付けられるにはもう少し時間が掛かりそう。
ごめんね、知世。
貴女には一生消えないトラウマを植え付けることになってしまって…。
ウチの両親にも伝えて欲しい事があったけど、もう無理みたい…。
だって、私の目の前には、もう…。
【Linaria…0】