第76章 情慾
唇が触れるだけの口付けをして、主殿が目を開く。
外から差し込む月明かりに照らされた、蕩けそうな何とも言えないその色に、自分の方が飲まれてしまいそうな感覚になる。
「さん‥私がお嫌ではありませんか?」
「一期…」
頬を撫で、何度も角度を変えて唇を甘噛みする様に口付ける。
頬を撫でていた手をきゅっと握り、目を閉じた主殿のそれに、受け入れてもらえたと思い、ぎゅっと抱き締める。
あぁ、さんがこんなに傍に…私は幸せ者ですね。
今だけで良いんです。
「貴女が欲しい。」
上唇を甘噛みして、鼻先にちゅっと軽く口付ける。寝間着の裾から手を忍ばせ、腰を擦った。