第93章 白妙
「春霞がたなびく山の桜の様に、の事はいくら見ていても飽きないんだ。」
「ぅ……。」
「あるじ、まさか注意したそばから…?」
「ち、違います!長谷部がいつもと違う話し方するからいけないんですっ!!」
耳が熱い!と騒ぐを押さえて、両手で隠してしまった顔をこちらへ向けさせる。真っ赤になった頬が何とも可愛らしい。
「俺もあいつには負けていられませんからね…」
「へ?」
「冬こもり 春咲く花を 手折り待ち 千たびの限り 恋ひわたるかも…」
難しい顔をして首を傾げる。ははっ、その顔もまた可愛らしいな。あいつの詠んだ短歌ではないが、本当には見ていて飽きない。
「‥ごめん、意味は?」
「ふふ、春に咲く花を手折り待って、何度も何度もに恋をし続けるんですよ。」
恋を?そう呟いたが嬉しそうに俺の手を握り直した。