第92章 夜桜
図書館を通り過ぎ、大きな道路へ出る。
「ここは初めて来る所だね?」
「うん、けど一本道だから解りやすいと思うよ。ここを真っ直ぐ行くとお堀が見えてくるの。」
ちゃんが指差した先に、緑の葉が揺れているのに気付く。やっぱりもう葉桜かなぁ…と肩を落とす。
「僕青々と生い茂った若葉も好きだよ?青葉の頃って風が気持ち良いからさ。」
こくりと頷いたちゃんの左手を僕の上着のポケットに突っ込み、肩を抱く。
「大丈夫さ、もし葉桜だとしても、来年も再来年もあるんだ。夏には向日葵や朝顔を、秋には秋桜や金木犀、冬には水仙や椿を一緒に見よう?」
僕達はいつまでも君と一緒に居るからね。ちゃんが歳をとって、可愛いお婆ちゃんになったとしても。
最期の時までずっと…