第89章 夢路
きぃ、と音がして、扉の方を見ると、あいつが部屋を出て行ったのが見えた。
なんだ、まだ起きていたのか‥すぐに帰って来るだろうと、何の気なしに目を閉じ頭の中で数字を数え始める。寝てしまおう、どうせ明日も国永が朝から騒ぐだろうし。
497、498、499‥
五百まで数えたところで、目を開く。
…くそっ、気になって眠れなくなった。随分俺も甘くなったもんだな、ここはあいつの家だ、迷う訳も無ければ、敵に遭遇する訳でもないのに。
自分の変わり様に溜め息をつくと、立ち上がり扉を開く。他の奴等は疾うに寝静まり、部屋は暗く静かで、辺りを見回しても人の気配は無い。
…どこだ、あいつの部屋か?
あいつの部屋のある玄関へ繋がる廊下を覗くと、扉の隙間から漏れる光りが、あいつの居場所を知らせた。