第5章 glass heart【赤葦京治】
顔を会わせにくい…と思っている時に限って、その機会は訪れるもの。
とあるスポーツセンターのバレーコートの中。
各々仕事を終えたメンバーたちが、久々にバレーをしようとここに集まった。
Tシャツ姿でウォームアップしているのは、いつもの顔ぶれ。
それに加え、今夜は灰羽と狐爪さん、それから何故か僕たちがよく訪れるカフェの店長までもが揃っている。
聞けば店長サンもバレー経験者らしく、木兎さんと何やら盛り上がっている最中だ。
「おーっす、ツッキー」
のそりと近づいてきたのは、黒尾さん。
「お疲れ様デース」
ストレッチの体勢から顔を上げてみると、トサカ頭の右下には "天然で人をおちょくるタイプ" の女性の姿があった。
「こんばんは、ツッキー」
ヒトの良さそうな顔で笑っているのは、恐らく黒尾さんにとって恋人未満の存在。尚且つカフェ店長の店でパティシエをしている、梨央さん。
初めて会ったのは、ゴールデンウィークに行われたバーベキューだった。
この人は悪気がない分、ある意味黒尾さんよりタチが悪い。
というのも、数日前。
就業後、梨央さんが働くカフェに黒尾さんと訪れた時のこと。
彼女からこっそり探りを入れられたのだ。
その内容ってのが、汐里について。
もしかして、黒尾さんと汐里の間に恋愛感情があるとでも思ってんの?
察しはいい方だから、すぐに掴めたその意図。
どんな子かと聞かれたから、まあ、思うまま話した。
『生意気。気が強い。可愛げがない。しかも僕にだけ。腹が立つ』
マイナス部分にしか触れてない。
本当のことだし、咄嗟に褒め言葉なんて出てくる僕じゃない。
それなのにこの人は、こんなことを言ったのだ。
『ツッキー、もしかして汐里ちゃんのこと気になってる感じ?』
は…?
思わず眉間にシワが寄った。
何なの、この人…?
会うのは二度目。
しかも、汐里の話題なんて出したこともない。
まさに今、短所を並べ立てただけ。
それなのに、僕の葛藤を見透かしたかのように、あっさりとそんなことを口にしたのだ。