第8章 【伍】実弥&煉獄(鬼滅/最強最弱な隊士)
――もうこれに尽きる。彼が男性に興味を持った衝撃よりも、こんな大男に欲情出来る筈がないという心配が勝って仕方無い。瞬発力も持続力も保たれる訳が無いのだ。
彼を謗る気は無いけれど、悲鳴嶼や天元みたいに俺を優に凌ぐ体躯の連中と比べたら、膂力に恵まれていても細身な部類である点は揺るがない彼では、抱いている最中に必ず萎える。精力を蓄える丹田の質が絶対的に変わってくるからだ。
「還精補脳は禁忌です!! いくら呼吸で、ある程度の血の巡りを操れるからといって、射精を伴わない絶頂感を脳に戻すなんて危険なんですよ!?」
「四の五の吠えやがって、るせェんだよッ!! 還精補脳とか何の話してやがるッ!! 放っとくと何処までも話を飛躍させやがってッ!! テメェの尻穴に魔羅突っ込んで啼かせてェだけだっつってんだよッ!!」
「――……」
明け透けな物言いに猫騙しを打たれたような、豆鉄砲を喰らったような顔をしてしまう。実際に男同士はそうするしかないとはいえ、風柱殿って性的な印象が無いから……そもそも欲望に忠実な奴なんて前田くらいで、鬼殺隊全体が禁欲的なのは否めないけれど。やはり「あの不死川実弥が助平な発言をしている」と戦慄いてしまった。まぁ、うん。誰に望まれた訳でも無いのに腹まで開襟してる姿からして、色々と奔放な側面も有るのかもな。
今にも這う這うの体で脱兎の如く逃げ出しそうな俺を察した風柱殿は、流石に言葉が過ぎた自覚が有ったのか、わざとらしい咳払いを吐いた後、極力抑制した低い声で静かに言葉を紡いでいく。元来の性格へ歪に絡み付く、加虐性をたっぷり含んだ性癖を列挙されたって俺の恐怖が取り除かれたりはしないんだけどな。
「初めこそ鬱陶しい面頬を被った生意気な眼ェした餓鬼が、一丁前に柱の宇髄を避けてやがるから気になった程度だったが、会話重ねる度に少しずつ俺へ気を許し始めたテメェを見ている内に……糞味噌にしてやりてェっつう衝動を抱くようになった」
「なんで」
「その頃にはもう生き別れた義弟を鬼殺隊内で探してるって話を宇髄に聞いてたんだがよォ……、望んでもなかなか手に入らねェ名前が、実は俺の掌中で骨の髄まで可愛がられてると知ったら、奴はどんな面ァするだろうと考える時間も悪くなかったんだよなァ」
「やば」
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