第27章 黄の心
絞り出すような小さな声。
花火にかき消されそうな音量だったけど、俺の視線は彼女の口の動きをキャッチしていた。
「・・・・みらい?」
『うん。
・・・それは、その、おかしいよね?』
はにかんでいるようにも、泣き笑いのようにも見えたその笑顔を、腕の中に閉じ込める。
はちっちのこんな顔、見たくない
俺の前では、笑顔でいてほしい。
「・・・おかしくなんかないッスよ
すごいじゃないッスか、先が分かるなんて」
『・・・うん、でも』
「俺はそんなことで人を『おかしい』だなんて思わないッスよ
・・・でも、まだ未来は言わないでほしいかな」
『・・・うん・・・っ』
ぎゅっと腕に力を込める。
鼻を啜る音が聞こえたけど、今は我慢しなくていいよって言いたい。
そのあと、またあの笑顔で笑ってくれるなら。
俺は何回でも、いつでも、はちっちの涙を受け止めるッスよ
もし、はちっちが未来が見えているのなら。
俺のこの気持ちにも気が付いているのだろうか。
やっぱり、残酷なもんなんだな
はちっちなら、知っても言わないでいるんだろう
その優しさはきっと、誰かを知らぬ内に傷つけてしまうかもしれない
でもそれが、俺なら。
別に、我慢できる。
俺にだけその優しさを見せてほしい。
傷つくのは、まっぴらごめんだけど
はちっちのためなら、いくらでもいい
「・・・はちっち、好きッスよ」